
2012年の北ボルネオ サバ州鉄道
2000年にコタキナバルにあるホテルグループが観光の一環としてタンジュンアル~パパール間で蒸気機関車牽引の観光列車の運行を始めました。その後この列車の運行は観光企画会社に移行しましたが、かわらず運行されています。「北ボルネオ鉄道」とは観光向けの懐旧的な命名だとおもいます。2007年から運休して行われた大規模改修の結果、Peter Crush氏が1996年に訪問したころと大きく変わってました。(2012年6月撮影)
タンジュンアル駅の1955年バルカン・ファンドリ製造の蒸気機関車

1955年イギリスのバルカン・ファウンドリーが当時の北ボルネオ鉄道向けに3輌製造した蒸気機関車のうちの1輌です。バルカン・ファウンドリーはイギリスのランカシャーにあった機関車製造会社で日本の1号機関車(大宮の鉄道博物館で保存)を製造したことでも知られています。この会社は蒸気機関車を1956年まで製造し、その後もディーゼル機関車などを製造していましたが、1962年にイングリッシュ・エレクトリックに買収され2002年に工場は閉鎖されました。
観光列車客車

観光列車は、先頭に食事などを積み込む荷物車(製造所不明)と、1975年製の川崎重工製客車5輌を連結しています。川崎製の客車は、かつて普通列車で使用されていたものと思われますが、内装は観光用に改修され、豪華な木造仕上げとなっていました。
タンジュンアル駅の観光列車改札口

2012年現在観光列車は週二回水曜日と土曜日に運行されていました。観光列車の改札口は通常の列車の改札と別になっています。通常の列車は左側のプラットフォームから発着します。この駅が終端です。奥が客車や機関車の車庫になっていますが、立ち入り禁止で見学出来ませんでした。
燃料の薪

燃料は石炭ではなく薪です。そのためペルペア式の大型火室が採用されています。バルカンファウンドリ社の資料によれば、この機関車は薪焚きと重油焚きの仕様があるようです。
運転台の焚口

薪は附近に森林資源が豊富にありますが、石炭には熱量が及びません.そのため機関助士は、2.43平方メートルの火室に、頻繁に薪をくべることになります.
運転台機関士側

機関士席は右側でした。なぜ、イギリス領だったのに右側なのかはわかりません。機関士の座る椅子はなく、ずっと立ったまま運転することになります.
薪積載用貨車

定期列車では燃料はテンダーに積んだ分で足りるのですが、停止・出発を繰り返す場合には予備の燃料を機関車の次に連結した貨車に積み込んでいます。
キナル駅に停車する列車

タンジュンアルからパパールは約35kmほどですが、10時に出発してパパール到着は11時45分で、1時間45分を要します。観光列車なので途中のキナル駅では中国寺院や駅前の商店を見学するため20分停車します。
モスクの脇を通過する中国製ディーゼル機関車と客車

タンジュンアル~パパール間には1日2往復の普通列車があります.こちらは2009年中国の南車資陽機車有限公司製のSDD12形ディーゼル機関車と、広州中車軌道交通装備股分有限公司の客車です。新しい車輛は冷房完備です。客車3輌でディーゼル機関車のプッシュプルでは、オーバースペックなのか、その後2015年に会津鉄道8500形(名古屋鉄道8500形)気動車2輌が譲渡されて運用されています。
トンネルを抜ける機関車

現在は鉄道に平行してほぼ道路がありますが、完全に併行ではなく、このトンネルは道路から少し離れたところにあります。観光列車には冷房がありませんので、窓はずっと全開なので、トンネル内に生息するコウモリが車内に入ってきたりします。
パパール駅転車台

11時45分に到着したパパール駅では、復路の出発の12時30分まで、転車台で転換したあと待機します。この鉄道はさらにビーフォートまで約52km、さらにその先に支線がテノムまで49kmあります。運転系統はタンジュンアル~ビューフォート間とビューフォート~テノム間は完全に分離されていています。ビューフォートから先の線路状態は悪く、急勾配・急カーブで、列車も旧来のものが使用されています。
沿線風景(1)

ほぼ鉄道に平行して道路がありますので、マイクロバスで観光列車の追っかけをしました。観光列車のほかに定期運行の列車は往復3本運行されていました。
沿線風景(2)

2日間撮影しましたが、2日目はフォトラン(撮影を目的とした貸切の臨時列車)ですので通常の定期観光列車より早く出発して往路5回撮影しました。しかし復路はちょっとしたアクシデントが発生しました。
沿線風景(3)

薪炊きでほとんど煙が出ていなかったのですが、この時は真っ白な煙でした。しかし正体は煙ではなく、煙管から漏れた水蒸気でした。
車内提供の食事




観光列車は食事のサービスが含まれています。その他乗車記念のパスポート配布され途中駅などでスタンプがあり、記念に押印することが出来ます。
煙管からの漏水発生

煙管からの漏水は厳しく機関車の圧力もだいぶ下がってしまいました.そんな訳で復路は停車できないということで撮影はなし.機関士さんが煙室扉を開けて事情を説明してくれました.
プタタン駅での救援機関車

プタタン駅までたどり着きましたが、ここで完全に蒸気がなくなり運行不能になりました。救援のディーゼル機関車によりタンジュンアル駅まで戻りました。これはこれで珍しい体験だったと思います。