
日本での台湾蒸気機関車
基隆炭鉱鉄道3号、6号




台北と基隆の間にある五堵には、かつて基隆炭鉱鉄道が存在し、610mm軌間の小型蒸気機関車が使用されていました。3号機と6号機は1930年代、大阪の楠木製作所で製造された3.5トン機で、炭鉱の専用線で石炭輸送に従事しました。1970年代は、国鉄における蒸気機関車がすべて姿を消した時期にあたり、炭鉱や工場、地方私鉄で稼働していた小型機関車もすでに1960年代までにほとんど姿を消していました。そのため、日本国内には小型蒸機の保存例が少なく、廃止直後の基隆炭鉱鉄道から里帰りする形で移されたこれらの機関車は、きわめて貴重な存在となっています。炭鉱時代には泥にまみれていた機関車は、里帰り後に整備され、現在は成田ゆめ牧場で動態保存されています。指定された日に限り、走る姿を見ることができます。(撮影:2003年、2004年、2008年)
台糖347号


台糖347号は、台湾糖業公司が1948年にベルギーの AFB(Anglo-Franco-Belge)から輸入した、12.5tのC形タンク機関車です。昭和63年(1988年)には河北青年会議所(JCI河北)が購入して河北町に寄贈し、かつて当地を走っていた「いもこ列車」を偲ぶかたちで、河北中央公園において動態保存が始まりました。その後、平成17年(2005年)に機関車本体のボイラーが故障し、更新には多大な費用を要するため、車体後部に蒸気発生装置を搭載して、その蒸気をシリンダへ供給して走行する方式に改造され、現在の姿となっています。年に数回の公開日に、子どもたちを乗せて運転されています。(撮影:2025年9月)
台糖360号


台湾糖業公司の台糖360号は、1948年にベルギーのチュビズ(Tubize)で製造された 12.5tのC形タンク機関車です。1990年ごろ埼玉県上尾市の個人が入手して保存していましたが、平成17年(2005年)に裾野市の日本庭園鉄道(JGR)に移り、その後さらに栃木県の那珂川清流鉄道保存会に移管されました。現在は同会で保存展示されていますが、公開日は不定期となっています。 (撮影:2005年上尾、2014年那珂川清流鉄道)
台糖362号


台湾糖業公司の台糖362号は、1948年にベルギーのチュビズ(Tubize)で製造された12.5tのC形タンク機関車です。廃車後に日本へ渡り、昭和61年(1986年)に開園した野辺山SLランドで動態保存されました。この際に車体後部に大きな蒸気発生装置を積む姿に改造されました。平成30年(2018年)同園の閉園に伴い、埼玉県鶴ヶ島市のカトーレイルウェイパークに移されました。外付けの大型装置は撤去され、車体内に収まる小型の蒸気発生装置に置き換えられました。しかし原形に復されるのではなく、みどり色に塗装され「きかんしゃトーマス」に登場するキャラクターを模した「Oliver(オリバー)」風の姿で保存されています。普段は車庫内で保存され窓越しに一部を見る事が出来ます。(撮影:2018年野辺山、2025年カトー)
台糖363号

台湾糖業公司の台糖363号は、1948年にベルギーのチュビズ(Tubize)で製造された12.5tのC形タンク機関車です。廃車後に日本へ渡り、昭和61年(1986年)に開園した野辺山SLランドで静態保存されました。推測ですが362号と363号2輌を入手したのは動態保存を2輌にしたかったためだと考えられますが、ボイラーの保安基準の関係で蒸気発生装置を搭載しなければならなくなって費用がかかるため362号だけ改造したのではないかと考えます。野辺山SLランド閉園後はカトーレイルウェイパーク開園前だったため鶴ヶ島市役所で保存されていましたが、搬出後の所在は未確認です。(撮影:2020年)
台糖527号




西武鉄道山口線は、西武園ゆうえんちとユネスコ村を結ぶ、遊園地の遊具のような蓄電池機関車によって運行され、「おとぎ電車」と呼ばれていました。しかし実際には、軌間762mmでタブレット閉塞を用いる、れっきとした地方鉄道でした。昭和47年(1972年)には、頸城鉄道と井笠鉄道から蒸気機関車を借り受けて運転を開始しました。その後、昭和52年(1977年)には自社保有の蒸気機関車による運行を目指し、台湾糖業公司から2輌のコッペル製15t 軸配置C1の機関車を購入しました。すなわち昭和3年(1928年)製造の527号と昭和5年(1930年)製造の532号です。しかし昭和59年(1984年)、新交通システムへの転換に伴い廃車となり、西武園ゆうえんち内の「レストランポッポ」で保存されました。その後、平成23年(2011年)に台湾・高雄市の陳中和慈善基金会に譲渡され、台湾に戻され陳中和紀念館で展示されています。一方、532号機は廃車後ユネスコ村で保存されたのち、北海道の「丸瀬布いこいの森」を経て、現在はカトーレイルウェイパークにて静態保存されています。残念ながら、私はこの機関車を撮影する機会がありませんでした。 (撮影:1984年山口線、2008年西武園ゆうえんち、2024年陳中和紀念館)
台糖650号


台湾糖業公司の台糖650号は、昭和3年(1928年)のコッペル製、軸配置C1の機関車です。昭和49年(1974年)に東北興業が購入し、テンダー部分を協三工業が製造して整備しました。そして蔵王町のレストラン「レジーナ」前に展示していましたが、レストラン閉鎖後、そのまま放置され荒廃しました。平成15年(2003年)秋田のI氏の盡力により台湾に戻り、蒜頭糖廠で保存されました。2017年に嘉義縣文化観光局が修復費用を出して修復しましたが、動態復元までは至っていません。現在は蒜頭糖廠で展示されています。(撮影:2003年蔵王町、2024年蒜頭糖廠)。
台湾鉄路管理局LDK56号


台湾鉄路管理局の台東線はかつて762mmの狭軌でした。建設当時、将来は他の路線の1067mmに改軌することとして、建設費の安い軽便鉄道規格で建設されました。LDK50形はそこで使用された、軸配置Dの21.4tのタンク機関車で、大正2年(1913年)から昭和13年(1938年)にアメリカのポーター社、汽車製造、日本車両、日立で13両製造されました。このLDK56は大正7年(1918年)汽車製造で製造されました。1984年ごろ日本に戻り、越谷市の「ステーキペコペコ南越谷店」で展示されています。一時期ペコペコでは鉄道車輌を集めて展示したり店舗にしていました。この南越谷店も裏に廻ると、店舗の建物の下に電車の台車を見る事が出来ます。大事に保存されているという雰囲気はなく残念です。(撮影:2004年)
台湾鉄路管理局LDK57号




このLDK57は大正9年(1920年)汽車製造で製造されました。1984年ごろ日本に戻り、たまプラーザショッピングセンターで展示されたのち、蓮田市の「ステーキペコペコ」に移りました。その後同店の閉店後、空地に保管されたのち、那須町の「那須SLランド」で機関車トーマスのような派手な塗装に変更され展示されています。(撮影:1997年蓮田店、2003年閉店後、2005年空地、2011年那須)
その他、台糖358号(1948年Tubize製造)は大分県中津市の食堂・民宿の「汽車ポッポ食堂」で屋外保存されています。なおこの食堂には他にも耶馬溪鉄道の車輌も保存されています。台糖535号(1931年日本車輌製造)は兵庫県姫路市のマキウラ鋼業本社で道路から見学できる屋外に保存されています。残念ながらどちらも未見です。